RPGといえばコレ!というゲームは人によって色々あることでしょう。
この記事執筆時点で僕が人類史上最高傑作RPGと思っているのは「The Witcher 3 : Wild Hunt」という作品です。
タイトルを見ればわかるようにシリーズ物の最新作なのですが、実は1と2って3ほど話題にならなかったのですよね。
というのも、いわゆる「洋ゲー臭い」作りで、はじめはPCでしか遊べず軽い気持ちで手を出せる作品ではなかったのです。
しかし!今やウィッチャーといえばNetflixでもドラマ化され、ゲームも次回作の存在が噂されるなど、それなりに注目が集まっているタイトル。
勧善懲悪に収まらない、オトナなストーリー展開が大きな魅力ですね。
原作小説も短編集以外の長編はすべて日本語化されていますし、記念すべき第1作をやるなら今!!ということで「The Witcher」、ご紹介していきます。
- 原作譲りの重厚なストーリー
- プレイヤーの選択と責任
- 戦略重視の戦闘
The Witcherの概要
The Witcherはポーランドのファンタジー小説を原作としたRPG。
原作小説を下敷きにしているだけあり、ストーリーはかなり濃密。
また、プレイヤーはゲーム内の様々なシーンで重要な決断を下すことになるのですが、どの選択肢も不幸な結末が待ち受けており、ふたりの人質のうちどちらを見捨てるか的な、それはもうツライ選択を強いられます。
なお、キャラクタークリエイトは存在せず、リヴィアのゲラルトという確立されたキャラクターを操作することになります。
すでに設定が存在するキャラクターなので、ゲーム世界での立ち位置や友人関係はすでに出来上がっていますが、自分の選択で大きく結末が変わるのでロールプレイングしている感が非常に強いです。
気に入っていたキャラクターを敵にまわしてしまい、泣く泣く切り捨てる…なんてこともしばしば。
システム的には、クエストを追いかけながら経験値を貯めて、スキルを伸ばしていくことで成長するという王道なゲームです。
一方で戦闘のメカニズムはクセが強く、アクション要素よりも戦略性重視といった感じ。
The Witcherのあらすじ
主人公のゲラルトは、モンスター退治を生業とする「ウィッチャー」。
殺人的な訓練と薬物による突然変異を経ており、超人的な剣技と強靭な肉体も持つ。
実はゲラルトは原作の最後で農民にピッチフォークで刺されて死亡(本当に死んだのかは微妙でしたが)。
本作は原作の続きを描いており、死んだはずのゲラルトが「何か」に追われているところを仲間のウィッチャーに助けられるシーンから始まる。
しかもゲラルトは生前の記憶を失い、何から逃げていたのかも思い出せない。
仲間に助けられ落ち着いた矢先に、ウィッチャーの拠点が「サラマンドラ」と呼ばれる賊から襲撃を受ける。
若手のウィッチャーが殺害され、ウィッチャーを生み出す秘法も盗まれてしまう。
奪われた秘法を取り戻し仲間を殺した仇を討つため、ゲラルトはサラマンドラを追ってテメリア王国の首都ヴィジマへとたどり着く。
しかし、事件の裏には世界秩序の再構築を目論む陰謀が…。
こうしてウィッチャー3部作が幕を開けます。
魅力
冒頭でもご紹介したように、The Witcherは原作小説ありのゲームです。
しかも原作小説は短編集2冊と長編5冊というなかなかのボリューム。
当然登場人物や地名、モンスターや魔法の名称など、専門用語は盛りだくさん。
じゃあ原作読んでいないとツライかといえば、そんなことはありません。
しかも強面で愛想の悪いゲラルトですが、実は仲間思いのいいヤツだったこともあり、昔の知り合いは(基本的に)全員親切にしてくれます。
道端で助けたドワーフ「おう、ゲラルトじゃねえか!お前は死んだって聞いたんだが?何?記憶がないって?命があるだけマシだな。とりあえず酒でも飲みに行こうや!」
…みたいな。
原作は知らずに全編遊びましたが、ストーリーの理解には特に問題ありませんでした。
重要な用語は遊びながら覚えられますし、ゲーム内の用語や登場人物、地名などはすべてテキストで解説があります。
世界観を理解するためにしっかりと情報がまとまっていますよ!
重厚なストーリー
The Witcherシリーズの最大の魅力はそのストーリー。
主人公ゲラルトは犯罪組織サラマンドラを追うわけですが、背景には世界情勢や様々な国、種族、組織の思惑や陰謀が渦巻いています。
短くまとめるのは難しいのですが、大まかな要素は以下の通り。
- 世界情勢と国家間の戦争
- 人間と非人間種族の対立、差別構造
- 主人公個人の物語
- 世界滅亡の予言
まず世界情勢としては、数年前に北方諸国と南のニルフガード帝国の2度めの大きな戦争が終わった直後。
北方諸国はなんとか独立を維持していますが、戦の傷跡からは完全に立ち直っていません。
また、この世界では人間とそれ以外の種族が対立しており、エルフやドワーフなどの非人間種族は人間たちから差別を受けています。
一部の非人間種族は「スコイア=テル」という集団を組織し、人間からの開放を目指して勝ち目のない争いを続けています。
こうした戦後の不安定な情勢の中、民衆の間では「永遠なる炎」という宗教が流行っています。
彼らは騎士団まで組織しており、前述の「スコイア=テル」を危険分子(要はテロリスト扱い)として排除することを望んでいるのです。
さて、主人公ゲラルトは自分の目的を達成したいだけなのですが、行く先々で国や組織の思惑にからめとられてストーリーが展開していきます。
もちろん、サラマンドラもただの犯罪組織ではなく、裏に国家絡みの陰謀が見え隠れしています。
また、もう一つの重要な要素として「イスリンの予言」というものがあります。
世界の終焉を予言しているのですが、原作小説から抜粋&翻訳するとこんな感じ
汝らに告げる。剣と斧の時代、狼の吹雪の時代は近い。白冷と白光の刻は近い。狂気と屈辱のとき、「テッド・デリーダ」終わりの刻は近い。
Andrzej Sapkowski(2008):Blood of Elves
世界は霜のなかに死に、新しい太陽とともに生まれ変わる。世界は古き血、ヘン・イチェルの血、撒かれた種から生まれ変わるだろう。その種は芽を出さず、炎のように燃え上がるのだ。
エス=トゥース・エス!かくなるべし!徴に気をつけるのだ。その徴とはなにか、汝らに告げる。まず地上にアエン・シーデの血が流れるであろう。エルフの血が…。
実はこの予言、原作から登場しています。
果たして世界の滅亡は避けることができるのか?
と、短くまとめるのが不可能なほど様々なストーリーが入り乱れています。
悩ましい選択肢とやるせない結末
前述したストーリーを背景に、ゲラルトの会話によって展開が大きく変わっていきます。
「悪は悪だ。大も小も、中途半端でも関係ない。程度は恣意的に決められ、定義すら曖昧だ。もし2つの悪のうちどちらかを選ばされるなら、いっそ何も選ばないほうがいい」
というのがゲラルトの信条なのですが、彼の意図に反して随所で選択を迫られます。
政治やイデオロギーが対立する2つの勢力や人物のどちらに加担すべきかを選ばされるのですが、どちらも筋が通っていたり、良かれと思った決断が大惨事を招いたりします。
善悪の境目は大変判別が難しく、悩みに悩んで出した結果が仲間や罪のない人間の死だった…。
選択肢がすべて悪い方向にしか進まない場合もあり、もうほんとにツラい。
また、人間同士、種族同士の憎しみ合いにはもはや理由がなく、イデオロギーの対立にも終りがありません。
旅の途中、ゲラルトは様々な人達と出会い、時には酒を交わし、ともに冒険をします。
つい先程まで背中を預けて戦った仲間を殺さなければならない場面もあります。
友人を助けるには、別の友人を殺すしかない。
人助けをしても、人殺しと罵られる。
悩んで決断しても報われない。
もちろん、セーブデータをロードし直して選択し直したり、事前に攻略チャートを見てバッドエンドを避けたりもできます。
しかし、この選択の重要性と結果に対する責任が、ゲラルトへの感情移入とゲーム正解への没入感を強めます。
The Witcherを遊ぶのであれば、ロードによるやり直しや攻略チャートの使用は避けたほうが面白いですよ。
アクションより戦略重視の戦闘
さて、肝心のゲームプレイについてです。
経験値によってレベルアップ、スキルの習得を行い、錬金術で回復アイテムなどを作り戦闘で使用するなど、システムそのものは比較的シンプルだと思います。
特徴となるのが戦闘システムでして、アクションというよりはリズムゲーム的な感じです。
攻撃回避やダメージの大小はステータスによって決定するので、アクション要素は少なく立ち止まって殴り合う感じになります。
じゃあそれがつまらないかと言いますとそんな事はありません。
武器とスタイル
ウィッチャーは人間用の鋼の剣、怪物用の銀の剣を使い分けます。
また、それぞれの剣にストロング、ファスト、グループという3つのスタイルが存在し、敵の特性や人数に応じて適切なスタイルを使い分ける必要があります。
動きが鈍く体力の多い敵にはストロング、体力が少ない代わりに素早い的にはファスト、そして大人数を相手するときはグループといった感じです。
また、レベルアップによって各スタイルの攻撃力攻撃力向上や出血や気絶等のボーナスを付与できるのですが、全スタイルを均等に割り振ってしまうと器用貧乏になってしまいます。
ゲラルト対多人数というシーンが多いため、グループスタイルを中心に育てつつ、好みのスタイルにスキルを割り振っていけば殆どの場面で困ることはありませんでした。
印
ウィッチャーは魔法使いではありませんが、簡単な呪文である「印」を使いこなします。
- アード 衝撃波で敵を気絶させる
- クエン 魔法の盾を展開する
- イグニ 炎によって的にダメージを与える
- イャーデン 魔法の罠を配置する
- アクスィ 敵の精神を混乱させる
ゲラルトは記憶喪失であり、これらの印も忘れてしまっています。
ゲームを進めることで一つずつ印を習得し直し、レベルアップによって特殊効果が付与されていきます。
難易度が低ければ正直剣だけでもどうにかなるのですが、高難易度の後半戦では印がないとそれなりに厳しい戦いを強いられます。
また、剣技にスキルを振りすぎると印が全く役に立たず、印に振りすぎてもジリ貧の戦いになり、どのようにスキルを振っていくかも悩みどころですね。
そもそもすべてのスキルを習得できるほどのレベルアップはできないので、剣技と印のバランスをどのように取るかが重要。
剣技全体のスキルを伸ばしつつ、特定の印に頼るのが安全策のようです。
霊薬とオイル
ウィッチャーはミュータントとして変異しており、毒物への耐性が非常に強くなっています。
通常の人間にとってはただの毒物になってしまう「霊薬」を使い、反射神経や体力の向上、暗闇を見通す視力や特定モンスターへの優位な体質を手に入れることができます。
まずは植物学や怪物に関する本を読み、材料を集め、霊薬を調合。
事前に戦う相手や環境がわかっていれば、適切な霊薬を摂取することで優位に立ち回ることができます。
難易度が低ければ霊薬に頼らずともなんとかなることが多いのですが、高難易度の場合やゲーム終盤を霊薬無しで乗り切るのはなかなか難しく、ただ剣を振り回すだけでは勝てないバランスになっています。
また、霊薬の摂取にはデメリットもあります。一度に大量の霊薬を摂取すると毒性が一気に蓄積されてしまい、体力の消耗につながるのです。
霊薬の効果を打ち消す霊薬もあるため、事前の準備と「正しい容量・用法」が大切なわけです。
また、剣に塗布する「オイル」を調合することもできます。
それぞれのオイルは特定のモンスターに対してのみ効果を発揮するため、やはり事前の準備と調査が大事です。
水辺での戦闘であれば水棲生物用オイル、街の墓場で宝探しなら屍鬼用オイルなど、状況に応じて最適なオイルを選ぶことが肝心です。
まとめ
実写ドラマの影響で、「The Witcher3」の2019年度売上が前年比で倍近く増えたそうです。
ドラマも3も楽しませてもらいましたが、僕にとってのThe Witcherの原点はやはりゲーム第1作。
原作&続編があり、第1作が10数年前の作品、しかもPCでしか遊べない。
お世辞にも手を出しやすい作品ではないと思います。
が、The Witcherのゲーム三部作は是が非でも第1作からプレイしてほしいのです。
なぜなら、第1作のクリアデータが第2作のストーリーに影響を与え、第2作のクリアデータも第3作のストーリーに影響を与えます。
作品をまたいでプレイヤーの選択がストーリー展開に影響を与えるのです!
僕は第1作目からずっとファンだったので、10数年に渡ってThe Witcherシリーズを楽しませてもらっています。
もちろん全クリには時間がかかりますが、The Witcherシリーズは間違いなく「人類史上最強のRPG」の一つです。
是非、遊んでみてください!
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