初めてスマホを手にしてからもう10年は経つだろうか。
すっかり生活の一部…を通り越して体の一部になってしまい、駅の改札、コンビニでの買い物、家族や友人とのコミュニケーションに読書、買い物などなど、スマホがないと生活できないような気さえする。
そんなわけで家族の前でも何も考えずにスマホを使いまくっていたところ、ある日カミさんに「親がスマホばかりいじって自分にかまってくれない、と子供に思われてもいいのか」と問われた。
ぐうの音も出ない。反論の余地なし。さすがに自分を恥じた。気が付いたら完全にスマホに生活を支配されていた。
そんなわけで今回、スマホ依存症からの脱却を目的に電話とSMSぐらいしかできないPunkt. MP02 New Generationという携帯電話を買った。
- スマホを触る時間をかなり減らせる
- よく考えられたデザインと使いやすいインターフェース
- メッセンジャーアプリのPigeonが使える
- 通信キャリアとの相性に要注意
- お値段は高め
- 人間関係の整理ができるか…
特徴
Punkt. MP02とは…?
Punkt. MP02 New Generation(以降 Punkt. MP02)はフィーチャーフォン…つまり携帯電話だ。
Punkt.はスイスに本社をおく、2008年に設立された新興のメーカー。
社名は「点」や「ピリオド」を意味し、シンプルで明快、焦点を絞った製品づくりを象徴している。
Punkt. MP02 New Generationのスペック
サイズ | 縦 117mm 横 51.3mm 厚さ 14.4mm |
重量 | 100g |
ディスプレイ | Gorilla Glass 3(耐指紋性撥油コーティング) サイズ:2.0 アスペクト比:4:3 解像度:320×240(QVGA) |
プロセッサー | Qualcomm Snapdragon 210 processor |
RAM | 2GB |
ストレージ | 16GM |
OS | APHY 1.2 |
接続機能 | 4G LTE with VoLTE Wi-Fi IEEE 802.11 b/g/n, 2.4 GHz Bluetooth v4.2, A2DP USB 2.0 USB-C コネクター |
SIMカード | nano SIMシングルスロット SIMフリー |
バッテリー | 1,280mAh リチウムイオン 連続待ち受け: 180時間 連続通話: 4.2時間 充電時間:2.5時間 (1.0Aで充電時) |
防水性能 | IP52(IEC規格60529) |
本体カラーは前世代から引き続きのブラックと、New Generationから追加されたライトブルーから選べる。
ブラック | ライトブルー |
---|---|
ちなみに前世代のPunkt. MP02 Mobile Phoneは、2020年度のグッドデザイン賞を受賞している。
技術スペックで製品が作られるものが多いなか、理想とする『心地よい生活』をテーマにスペックが導き出されている点は、私たちに新たな選択と気づきを与えるきっかけとなりうる。我々に問いかける『情報との適切な距離感』がこの商品の隠された本当のデザインである
Mobile Phone [Punkt. MP 02 Mobile Phone]
1か月ほど使用して魅力的に感じられたのは、片手で十分に操作できるサイズ感、物理ボタンによる直感的な操作など。
何より家族や友人と連絡を取るぐらいしか使い道がない、というのが素晴らしい。
限られた機能
Punkt. MP02でできることは少ない。
通話、SMS、電卓、カレンダー、メモ、時計/タイマー機能などが中心だ。
Punkt. MP02の機能
- ノイズキャンセリング機能付きの通話
- SMS(MMS受信/表示可能
- 連絡帳
- ノート(リマインド機能付き
- 時計(アラーム、ストップウォッチ、タイマー、世界時計
- 計算機(四則演算のみ)
- カレンダー
- テザリング
最近のデバイスらしい機能では、テザリングが利用できるぐらい。
また、搭載されているAPHY 1.2はAndroidがベースだが、メニューはテキスト表示のみだ。
TwitterやSmart Newsなどのアプリをインストールすることもできず、ブラウザも搭載していないためWebサイトを閲覧することもできない。
つまり、何かに打ち込んでいるときや仕事で忙しい時に、不要な通知に邪魔されることがないというわけだ。
通知が来るとスマホに触り、スマホに触るついでにTwitterを開いて、Twitterからブラウザを開いて…なんてやっているとかなりの時間を浪費することになる。
しかし、この携帯電話ではそんなことはできない。
スマホには怒涛の勢いで通知が流れ込んでくるが、この携帯電話には家族や友人からの連絡だけが通知される。
Pigeon
Pigeonとは、Punkt. MP02で利用できるLINEのようなメッセンジャーアプリだ。
SMS機能もあるのでテキストメッセージのやり取りは普通にできるのだが、グループメッセージは利用できず、送信にお金がかかる。
一方で、Pigeonでのチャットや通話は当然無料だし、SMSではできないグループメッセージはもちろん、絵文字や画像の受け取りもできる。
このPigeonというアプリは、Signalプロトコルというメッセージを暗号化する通信規格が使われている。
通信が暗号化されることの何がうれしいかというと、すべてのメッセージや通話が常に暗号化されるので他に誰かに盗み見られる危険がなくなるのだ。Signalはその安全性の高さが評価され、アメリカ合衆国上院議員の公式な連絡ツールとして採用されているそうだ。
また、広告や企業による個人情報のトラッキングなどもなく、安心して家族や友人とのコミュニケーションに集中できるのも魅力的だ。
当然スマホでもSignalを利用できるので、家族や友人にPunkt. MP02を買ってもらう必要はない。
外観
硬派な筐体
機能面もそうだが、Punkt. MP02はその外観も魅力的だ。
Punkt. MP02を手掛けたのはジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)というプロダクトデザイナー。INFOBARをデザインした深澤直人とも親交が深いそうだ。
ポリカーボネイトの本体は、強度、耐熱性などに優れたグラスファイバーで強化されておりかなり頑丈そうだ。シボ加工のような質感で仕上げられており、チープな印象は受けない。
画面サイズは驚きの2.0インチ。小さい。
反透過性LCDスクリーンが使われており、暗いところはもちろん、日光したでも視認性はかなり高い。
画面右下にあるPunkt.のロゴは人によって好みが分かれそうだ。
また、サイズは縦117mm×横51.3mm、厚みは最大14.4mm、重量は100gとテキストを打つにも電話するにもちょうどよい。
ちなみに、付属するSIMカードツールはかなり頑丈で、今まで使ったものの中で一番扱いやすかった。
シンプルなインターフェース
Punkt. MP02で目を引くのは物理ボタンだろう。
ボタンを押すとポチポチという感触があり、電話を触っている感を味わえる。ちなみにバックライトもついているので暗いところでも問題なく操作できる。
一方でボタンの配置はガラケーとも異なり、テンキーの左側にもう一列ボタンが追加される形だ。
もちろん日本語の入力も可能で、ガラケーを使ったことがある人なら問題なく使えるだろう。物理ボタンなので当然フリック入力はできないのだが、長文をチャットするぐらいなら電話してしまえばよいのだ。
ボタンの配置とメニュー構造はちゃんと考えられており、必要な機能へ素早くアクセスすることができる。
画面のつくりも非常にシンプルで、白黒の画面とテキストだけで構成されている。メニュー周りの操作は上、下、決定、戻るボタンだけで可能で、かなり直感的。
また、よく使う機能やアプリはテンキーにショートカット登録でき、ロック解除して1秒で人に電話したりメッセージを送ったりできる。
使用感
優秀な携帯電話
また、スマホと違って長時間使っても通話中でも本体が発熱しないのもうれしい。
電池持ちもかなり長く、連続待ち受け時間はなんと180時間だ。もちろん実際はもう少し短いが、一晩充電を忘れた程度で使えなくなることはない。
注意点として、WiFiやBluetooth接続、テザリングを利用するとかなりバッテリーを消費する。
下手すると2時間程度でバッテリーを使い切ってしまうので、テザリング利用時などは充電しながらのほうが良いだろう。
また、ノルウェーの音響デザイナーが手掛けた着信音が可愛いところも触れておこう。
Pigeonがあればコミュニケーションは十分
脱スマホするにあたって不安だったのはLINEが使えなくなることだったが、結論から言えば全く問題なかった。
スマホのように画像や動画を送ったり、受け取った URL を開いたりすることはできないが、別になくても困らないことにも気が付いた。
頻繁にやり取りする相手は限られているし、外出先でのコミュニケーションはテキストと通話で十分だ。
どうしても画像やファイルを送りたいのであれば、パソコンを開いてメールやSignalを使えばいい。
スマホがなくても外出できる
外出するときはついついスマホをポケットに入れてしまうのだが、そうするとカフェや電車内でスマホばかり触ってしまい、家にいるのとあまり変わらなくなってしまう。
カミさんとのデートや友人との遊び/飲みの席でスマホばかりいじっていてはダメなのだ。
しかし、今ではPunkt. MP02と財布をポケットに放り込めば出かけることができる。
もちろん外出先でLINEやメールは受け取れないが、帰宅してからスマホやパソコンを確認すればいいのだから問題はない。
もうちょっと具体的には、外出先でスマホをいじっている時間は読書の時間に置き換わった。
タイマーやカレンダーなども必要最低限
携帯電話なので通話とメッセンジャーの話ばかりしてきたが、それ以外の機能も本当に必要最低限の物しかない。
- カレンダーに予定やタスクは追加できず、年月日の確認しかできない
- 時計関連ではアラーム、ストップウォッチ、タイマー、世界時計が使える
- 電卓も四則演算ができるぐらい
- メモには日時を指定したリマインド機能がある
僕個人としては予定管理は紙の手帳を使っているし、スマホでも時計周りの機能や電卓はめったに使わないので全然困ることはない。
キッチンにはキッチンタイマーがあるし、タイマーが必要なほど正確に時間を計測したい場面はそもそもあんまりない。
電卓についても、仕事で必要ならパソコンの電卓を使えばいいだけだ。
イマイチなところ
人間関係も整理されちゃう
メリットとの裏返しになるが、ユーザー数が圧倒的に多いLINEを使えなくなってしまう。
頻繁に連絡を取り合う相手にはSignalを使うようにお願いすることになるが、全員にSignalを使うようにお願いはできない。つまり、連絡を取り合う相手を選ぶことになる。
普段LINEでやり取りする相手の人数が多い人は、メッセンジャーアプリの移行を面倒に感じるだろう。
もちろん、スマホを手元に残しつつPunkt. MP02との2台持ちにするという方法もある。
スマホ依存度が高いと完全移行は難しい
さんざん脱スマホをうたいながら、僕はPunkt. MP02とスマホを2台持ちしている。
理由は簡単で、思った以上にスマホへの依存度が高かったことだ。
生活に必要なものでいえば、スマホのタッチ決済やモバイルスイカ、音楽の再生など。ほかのアイテムやガジェットで代替可能とはいえ、スマホ1台で完結するのはありがたい。
そして仕事の緊急連絡先としてもスマホを運用しているし、出張の宿や新幹線の確保などもスマホに頼り切っている。
通信キャリアとの相性に注意
Punkt. MP02にはテザリング機能があり、これのおかげでパソコンとPunkt. MP02だけ持ち歩く…みたいな運用が可能になる。
公式サイトによればNTTドコモとソフトバンク回線は動作保証されているようだが…
僕はmineoのマイそくのスタンダードコースをドコモ回線で契約している。最大通信速度が1.5Mbpsに限られる代わりに通信容量無制限で月額990円という、Punkt. MP02と大変相性の良いプランだ。
しかし、マイそくはオプションなしでテザリングが利用可能なはずなのだが、Punkt. MP02とは相性が悪いようでどう頑張ってもテザリング機能が利用できなかった。
テザリング機能目当ての方は、動作確認が取れている通信キャリアを選ぶのが良いだろう。
僕が調べた範囲ではahamoとIIJmioはテザリング機能が利用できるようだ。
まとめ
スマホに支配された自分の時間を取り戻したいのであれば、Punkt. MP02は限りなく理想に近いツールだ。
仕事をしているときやブログを書いているとき、手が届く範囲にスマホが置いてあるとついつい手が伸びてしまう。
しかし、Punkt. MP02は手に取ったところで大したことはできないので、集中力を切らすことなく作業に復帰できる。
読みもしない通知や時間を浪費するアプリに邪魔されることもない。
テキストメッセージと通話ぐらいしかできない端末に5万円は高すぎる…かもしれないが、mineoのマイそくで月額990円という破格の通信費を実現できるのでプラマイゼロといったところか。
もしあなたがスマホの通知がうるさいとか、ゲームやSNSに費やしている時間が無駄だと感じているなら、ぜひ購入を検討してほしい。
コメント